現在25の専門分科会、および20の認定分科会を擁する歯学系学会の総本山的な存在の日本歯科医学会では、毎年、歯学研究や教育、地域歯科医療に貢献した歯科医師に学会最高の顕彰である会長賞を授与しているが、令和3年度「教育部門」に本学病院長・口腔インプラントセンター長の矢島安朝特任教授が受賞された。
この「教育部門」は、日本歯科医学会会長賞受賞基準第3条第二号による、歯科医学教育に30年以上従事し、その向上に特に著しい功績があったと認められる者が選ばれる大変栄誉ある賞である。
矢島先生は、昭和55年に東京歯科大学を卒業後、同校にて一貫してインプラント学一筋で、教育、研究に励んでこられた。インプラント学は多領域連携型の包括的学問であるという視点から、2005年東京歯科大学千葉病院に口腔インプラント科が開設され、先生が初代教授となり、その後2007年口腔インプラント学研究室、2009年に口腔インプラント学講座に昇格となった。
この時代の口腔インプラント学の教育は、インプラントが国家試験に出題されないことを理由に、ほとんどの大学では数時間の講義のみであったところ、他大学と比べはるかに多い年間48時間の講義+基礎実習を行い、マスメディアに取り上げられるような特徴的な実習を作り上げたことも含め、口腔インプラント学の学習方略の基本を構築した、日本で最初の口腔インプラント学講座を立ち上げた創成者であるといっても過言でない。
さらに、矢島先生はインプラント治療の事故防止に向けた教育活動として、歯科医師に対する教育としては、数多くのインプラントトラブルに関する論文や書籍を発刊し、また多くの歯学系学会においてインプラント事故関連の教育講演の演者を務め、各学会会員への知識向上に寄与され、都道府県歯科医師会等でも計100回以上のインプラント関連の講演を行い、一般歯科医師の生涯教育に多大なる貢献をされた。
日本歯科医学会においても、評議員、評議員議長、各種委員会委員等を歴任され、会務の健全な運営に尽力された。
これらが受賞に至られた概要である。
さる2月18日の日本歯科医学会評議員会にて授賞式が執り行われ、先生と同時に研究部門で田上順次先生(東京医科歯科大学名誉教授)、米山武義先生(静岡県歯科医師会会員)、教育部門で矢島安朝先生(松本歯科大学病院病院長)、荒木孝二先生(東京医科歯科大学名誉教授)、地域歯科医療部門で中村譲治先生(福岡県歯科医師会会員)の5名が受賞された。
栄えある受賞に心から敬意を表すると同時に、今後も本学の発展にご尽力を期待したい。
執筆:松本歯科大学歯科保存学講座 教授 吉成伸夫
出典:松本歯科大学「CampusToday No.460」