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松本歯科大学病院
歯周病

口腔の検査:唾液による歯周病細菌PCR検査

歯科の唾液検査

いまだ収束の気配をみせない新型コロナウイルス感染症ですが、この検査として無症状者や発症初期を疑う者を対象とした唾液を用いたウイルスのPCR検査の光景は、今や広く周知され、世界中で多くの人々が実施するところとなりました。

歯科においても歯周病患者さんの唾液の中には歯周病原因菌の遺伝子情報が含まれており、唾液のPCR検査を行うことで歯周病原因菌の割合や歯周病の重症度を把握することができるようになってきました。

歯周病の原因菌

主な歯周病の原因菌はPorphyromonas gingivalis (P. g菌)、Prevotella intermedia(P. i菌)、Tannerella forsythia(T. f菌)、Treponema denticola(T. d菌)およびAggregatibacter actinomycetemcomitans (A.a菌)の5菌種が考えられています。

唾液中のこれらの菌の割合がそれぞれ基準を越えている場合には、軽度~中等度の歯周病の状態にあると診断されます。本院の松本歯科大学病院ではこの検査を2021年9月から、すでに120人以上の患者さんを対象に実施しています。

特に本院で実施しているPCR検査ではP.g菌の線毛タンパクの一つであるフィブリリンの遺伝子fimAの分布に注目することで、重症型の歯周病の鑑別が可能です。

インプラントや歯科矯正への利用

さらに、難治性の歯周病の患者さん以外にも、口腔インプラント治療や歯科矯正治療を予定されておられる患者さんの検査としても多く利用されています。

インプラント治療や歯科矯正治療を予定している患者さんが現在のご自身の口の環境、特に歯周病菌の状況を把し、本格的な治療の開始前に必要に応じて歯周病の治療や対策をとることで、インプラント治療や歯科矯正治療の後に歯周病による不具合が生じるリスクを回避することができます。このように本検査は、患者さん個々の口腔環境に配慮したきめ細やかな治療や予防を行うことに役立っています。

全身への影響

一方、近年では歯周病の重症度と糖尿病、心内膜炎や動脈硬化症の病状には関連があることが明らかとなり、歯周病の治療と予防は全身の健康維持に強く結びついていると考えられています。

唾液の研究も進み、唾液には血液に匹敵するほどのさまざまな体の健康情報が含まれることがわかってきました。また、針を刺して行う採血よりも唾液を吐きだすだけの唾液検査の方が痛みもなく簡便に行えることも注目点の一つです。

唾液検査が重要な位置づけに

このような時勢を背景とし、唾液検査は血液検査、尿検査と同様に全身疾患の予防や診断あるいは更に精度の高い歯科治療を行うために重要な検査と位置づけられています。

松本歯科大学病院でも唾液を調べて、患者さんそれぞれのお口の環境を診断し、治療に活用しています。唾液検査に関するお問い合わせは、お電話でご連絡ください。

執筆:松本歯科大学病理学講座 教授 村上聡

出典:松本歯科大学「CampusToday No.469」

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