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松本歯科大学病院

歯根破折(歯のひび割れ)外来

歯根のひび・割れ(歯根破折)、根管内の穿孔(穴)修復に対応します

歯根破折(歯のひび割れ)外来のご案内

「歯根」にひびが入ったり、割れてしまった状態のことを大義で「歯根破折」といます。

当院では、外科用実体顕微鏡を用いて「歯根破折」や「根管内の穿孔(穴)」の修復治療および「根管内の破折器具」の除去等、難しい症例の治療も行っております。

歯根とは?

「歯根」とは、文字通り歯の根のことです。 家にたとえれば基礎(土台)にあたるもので、この中を神経や血管が詰まった「根管」という細い管が通っています。根管は、湾曲したり樹木の枝分かれのようになっていたりと、複雑な形状をしています。 虫歯の細菌感染は、この根管にまで広がる場合も多く、進行すると歯根の先端に膿が溜まり、既に神経がない歯でも強い痛みや腫れを引き起こすおそれがあります。

歯根のトラブル

従来の根管治療では、複雑な形の根管内の感染物質を手探りで除去しなければいけなかったため、感染源の取り残しなどが起こっていました。

被せ物で一旦きれいに治しても、後になって歯根の先端が化膿して、結果的に歯を失うことになり、再根管治療が必要になることも少なくありませんでした。

歯を残すために

そうした再治療を避けてできるだけ「歯を残す」ために、当院では豊富な経験と確かな技術に加え、外科用実体顕微鏡(以下、実体顕微鏡)を用いた精密な歯内治療を推奨しています。

歯内治療における実体顕微鏡の使用は、1990年代頃から欧米を中心に普及しはじめ、明るい視野で拡大して見ることにより、それまで「勘」や「手指感覚」で行っていた歯内治療を、正確で確実なものへと変化させました。

「歯根破折(歯のひび割れ)について」

歯を失う原因は?

歯を失う原因は、多い順に

  1. 歯周病(37.1%)
  2. むし歯(29.2%)
  3. 破折(17.8%)
  4. その他(7.6%)
  5. 埋伏歯(5.0%)
  6. 矯正(1.9%)

となっています。 (公益財団法人8020推進財団「平成30年 第2回永久歯の抜歯原因調査」による)。

「破折」の症例は多い

「破折」が3番目に多いことを考えると、破折を経験された方は少なくないはずですが、実は歯根破折に対する治療法は現在確立されておりません。

このため、歯根破折は通常「抜歯」と診断されます。

これは決して間違った判断ではありませんが、一方で患者様は、「本当に抜歯するしかないのか?」と戸惑うであろうことも想像に難くありません。

破折した歯のすべてを保存できるとは限りませんが、当院では、当該歯に特殊な接着剤とグラスファイバーを用いる補強法によって、保存的治療にも取り組んでおります。

「根管内の穿孔(穴)について」

「穿孔」とは?

「穿孔」は、何らかの原因によって根管に穴が空くことで、歯周組織や口腔が交通してしまう現象です。

多くは歯の根の治療中に生じる偶発事故で、そのほか、むし歯の進行や歯根吸収などの病的な原因によって穿孔にいたるケースもあります。

穿孔治療の難しさ

細い根管内の穿孔は肉眼で確認することが難しく、特に湾曲した根管や根の先端付近などで生じている場合は確認が困難となります。

このため穿孔部の確認には、実体顕微鏡や拡大鏡、歯科用X線CT検査などを用います。

穿孔の場所や大きさはさまざまで、上記の「歯の破折」と同様に抜歯と診断されるケースが多々ありますが、当院では穿孔部を封鎖する保存的治療に取り組んでおります。

歯内治療をはじめる前に

歯内治療を行う際は、原則、歯に装着されている冠(被せ物)、充填物および支台は除去してから行います。

治療中に歯根の破折や広範囲なむし歯が認められた場合や、歯質の穿孔が生じた場合には、治療方針を外科的歯内療法へ変更することがあります。

また治療が困難と認められた場合は、やむを得ず抜歯となることもあります。

なお「歯根の破折」および「根管内の穿孔」の修復治療は、自費診療となります。ただし「根管内の破折器具」の除去には、保険が適用される場合がございます。

症例

1. 上顎第二小臼歯の歯根破折

歯根破折(歯根のひび割れ)は、日常的に起こりうることです。

当院では歯根破折に対し、トンネルの耐震補強工法のシート工法と同様の考え方で、MMA系歯科接着用レジンセメント(スーパーボンドC&B®,サンメディカル, 以下レジンセメント)とグラスファイバーを用いたひび割れの補強を行います。

手順としては、破折線内に存在する感染物質をできるだけ除去し、拡大形成後にレジンセメントを流し込み、その後、カットしたグラスファイバーのスリーブ(管)を根管の形状に沿ってしっかり貼り合わせます。

図1.歯根の縦破折
歯根の縦破折

図2.
グラスファイバーのスリーブで破折部を修復

2. 根管内の破折器具の除去

歯の根管内に残留する異物(根管内異物)の除去に際しては、まず歯科用X線CT撮影を行います。
その画像診断結果を踏まえ、実体顕微鏡を用いて除去いたします。

【リスク】
「根管内異物の除去を行うことによって、結果として歯の厚みが減少し、穿孔する(穴が空く)などの偶発事故が生じるリスクがあります。」

歯内治療のための準備

1. 歯肉圧排

「歯肉圧排(しにくあっぱい)」とは、歯肉溝(しにくこう;歯と歯肉の間の生理的な溝)に細い糸(圧排糸;あっぱいし)を挿入し、歯と歯肉の境界を明らかにして、糸の太さ分の歯肉を排除する技術です。
歯肉圧排なくして、次の段階の正確な「隔壁」は作れません。

2. 隔壁

「隔壁」とは、治療中の歯に壁を作る処置を指します。
この隔壁を作らないと、次の段階の「ラバーダム」ができません。
隔壁が作れない歯は、根管治療ができない可能性が高くなります。特に奥歯の場合はこのようなケースがあります。

当院の根管治療では、必ず隔壁を作り、仮封剤(仮の蓋)には、光重合型コンポジットレジン(歯と同色の合成樹脂)を使用します。

図1. 歯肉縁上の残存歯質がなく、残根状態

図2. 隔壁を製作して接着した状態

3. ラバーダム防湿

「ラバーダム」はゴム製のシートで、根管治療を行うにあたり、なくてはならないものです。

ラバーダムは、治療時に細菌を含んだ唾液が根管内に流れ込み再感染してしまうことを防ぐのに極めて有効です。

また治療中に使用する薬剤の誤飲や誤嚥を防止して、安全な治療も確保します。
※ラテックス・アレルギーの方は、必ず申告願います。
(アナフィラキシー症状が発現する場合があり、ノンラテックスのシートに変更致します)

グラスファイバーとは

象牙質と弾性係数が近似してグラスファイバー・ポスト(GlassFiberPost ; GFP)は、残存歯質の状態により、最適な形状のものを適正に歯質に接着することによって、歯根破折のリスクを軽減します。また、適切な接着操作は、修復物と根管の間に発生するギャップ(隙間)を防止するため、再発のリスクを軽減します。

失活歯の補強にGFPを用いる場合、当院では、グラスファイバーがバイアスに編み込まれたスリーブを切り開いて平面状にします。これを、根管外周に配置し可及的に根管内の残存歯質の形態に適合させたGFPを歯質と接着させ、歯と築造物を一体化することによって理想的な支台築造を達成します。

グラスファイバーのリスク

・象牙質に対する接着は現状で確立されていないので、慎重な接着操作が必要なこと。
・ポストコアを植立させるための根管内形成にはマイクロスコープの視野下での慎重な施術が必要なこと。
・熟練を要する症例もあること。
・対合歯との咬合関係が不良な歯には適応外であること。
・接着材がはがれる可能性がある。

ご料金

グラスファイバーを用いた支台築造

22,000円〜55,000円

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