唾液による歯周病細菌PCR検査
近年、アメリカの生化学者によって1983 年に開発された DNA-PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査が歯科分野にも浸透したことにより、唾液を採取するだけで歯周病原因菌の割合や重症度を把握できるようになりました。
健康診断では、血液検査や尿検査から全身の健康状態を判断しますが、唾液にも血液に匹敵する情報が含まれることが明らかになっています。
歯周病患者は、高齢化とともに増加しています。
また歯周病は、「糖尿病」「低体重児出産」「心筋梗塞・脳梗塞にもつながる血管の動脈硬化」にも関わることが報告されています。高齢化が進んだ現在、歯周病の管理は全身の健康を維持するうえでも重要です。
歯周病の原因となる病原性細菌は、主に5種類あります。具体的にはPorphyromonas gingivalis (P.g菌)、Prevotella intermedia (P.i菌)、Tannerella forsythia (T.f菌)、Treponema denticola (T.d菌)およびAggregatibacter actinomycetemcomitans (A.a菌)ですが、口腔内にこれらの細菌が存在していたとしても、必ずしも病気の進行を意味するわけではありません。
問題となるのは「唾液中の細菌の量」です。それぞれが基準を超えている場合は、すでに感染しているか、病気の進行がすぐそこまで来ている状態で、軽度~中等度の歯周病の状態にあると診断されます。
インプラントの場合も天然歯と同様です。
インプラントと周囲粘膜の隙間で病原性細菌が増殖することで炎症が起き、インプラントの周囲の骨が溶けるインプラント周囲炎になる場合があります。
インプラント周囲炎から検出される細菌叢は歯周病と類似し、インプラントの生存率に負の影響を及ぼすことが報告されています。
このため、インプラント治療をすすめるうえでも病原性細菌を定量的に評価していくことが重要です。
私たちは、P. gingivalis 線毛遺伝子FimAの分布から歯周病の重篤度の鑑別を行うPCR検査を実施しており、これまでに1000名以上の患者さんの検査を実施してまいりました。
歯周病の治療経過に合わせて複数回のPCR検査を実施し、最初の検査結果とその後の検査結果とを比較して治療の効果を判定することにより、ケアの質を向上させ、口腔内を健全に保つための安定したサポートを提供させていただきます。